• 弁護士渡邊涼平

最近話題の「退職代行」について

最近よくニュースでも取り上げられるようになった「退職代行」業者。


 弁護士界隈では数か月前から話題になっていたのですが,この退職代行,法的に問題が発生しうる上に,完全に法的に問題が発生しないようにすると,「そんなことのためにそんな金額取るの?」という状態になる,言ってしまえば無茶苦茶な事業です。

法的に何が問題なの?

1.弁護士法72条違反の問題


 【コラム】1.弁護士って何ができるの?でも若干触れましたが,弁護士法は,その72条で,「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件…その他一般の法律事件に関して…代理…その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。」と定め,弁護士以外が「法律事件」の代理その他の法律事務を扱うことを禁止しています。


 退職代行業者は,「自分では会社と連絡を取りたくない被用者」の代わりに退職の意思表示を会社(雇用主)に対して行うことが主たる業務内容ですが,この代行行為は,「法律事件」の「代理」にあたる可能性があります。そして,当然,退職代行業者は報酬を得て退職の意思表示を行うのですから,弁護士法72条に反する行為となり得ます。


 この点について,退職代行業者は,「依頼者(被用者)の意思表示の代行をしているだけなので,法律事件の代理に該当しない。」という言い訳をしています。


 しかし,この言い訳には無理があります。


 なぜならば,退職代行業者に依頼をする被用者は,会社と何らかの理由により(大小様々でしょうが)トラブルとなっているが故に,会社に行って上司や雇用主に対して退職の意思表示をすることができない,または,したくない状態にあるわけです。


 そのトラブルは,被用者に非のあるトラブルかもしれませんし,雇用主ないしは上司・同僚に非のあるトラブルかもしれません。

 しかし,いずれにしても,退職の意思表示をすれば問題が解決するわけではなく,退職に伴い何らかの交渉を要する事案である可能性が非常に高いのです(何らの交渉も要さずに退職できるのであれば,自らの退職の意思表示をすればそれで退職できます。)。


 退職代行業者は,そのようなトラブルが潜在的にあることを把握しながら(把握していないと言うでしょうが),退職の意思表示を行うものですから,これは,「法律事件」の代理と言うほかありません。


2.被用者が退職できない問題


 仮に,退職代行業者が本当に純粋に「依頼者(被用者)の意思表示の代行をしているだけ」である場合,この退職代行業者から連絡を受けた会社(雇用主)は,この連絡を被用者の退職の意思表示として受け取り,退職手続に協力すべきでしょうか。


 その答えはNOでしょう。


 まず,退職代行業者が「依頼者(被用者)の意思表示の代行をしているだけ」である場合,その退職代行業者からの連絡は,被用者の友達から「あいつ会社辞めたいって言ってるんで手続してください。」と連絡が来ているのと変わりません。依頼者と面談すらしない退職代行業者からの連絡など,被用者の友達からの連絡未満の価値しかないでしょう。


 会社としては,そのような連絡が来たところで,本当に被用者自身が退職の意思を有しているか分かりませんし,「友達」と名乗る者からの連絡で退職の手続きを進める会社などないでしょう。


 また,上記のとおり,退職代行業者の活動は非弁行為に該当する可能性があるわけですが,弁護士法72条に違反する委任契約は無効であり(最高裁第1小法廷昭和38年6月14日判決),退職代行業者による退職の意思表示も無権代理行為として無効となる可能性があります。無効な退職の意思表示を受けても,会社(雇用主)は退職手続を進めることはできません。


3.被用者が懲戒処分を受けるおそれがある問題


 退職代行業者は,その多くが,「即日対応」「その日から会社に行く必要はない」等と宣伝しています。


 しかし,期間の定めのない雇用である場合,「雇用は,解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する」(民法627条1項)ため,仮に,退職代行業者からなされた退職の意思表示が有効であったとしても,原則としてその日から2週間は出勤しなければなりません。

 出勤しない場合には,無断欠勤として懲戒処分を受ける可能性があります。


 有給休暇が残っている方は,無断欠勤を回避するために「有給休暇を消化すればいい」と考えるかもしれません。

 しかし,雇用主は,「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」(労基法39条5項ただし書)とされています。そのため,雇用主が退職の意思表示を有効なものとして受け入れたとしても,業務の引継ぎ等の必要性から時季変更権を行使した場合には,被用者は出勤しなければなりませんし,出勤しない場合には上記と同様に無断欠勤として懲戒処分を受ける可能性があります。


 そして,雇用主が時季変更権の行使を示唆した場合には,退職代行業者はその時季変更権の行使の回避のための交渉を行うことができません(明らかな非弁行為となるため。)。


4.残業代請求や損害賠償請求の機会を逸するおそれがある問題


 上記のとおり,退職代行を利用したくなるような状態である場合,長時間労働を強要されていたり,会社内でパワハラを受けているようなケースが少なくないと考えられます。


 そのような場合には,退職の交渉に加え,残業代や損害賠償(慰謝料)の請求が可能な場合がありますが,当然,退職代行業者ではこれらの請求は一切できません。


 これらを考慮せずに退職代行を利用して退職した場合,残業代や損害賠償請求をするための証拠等を集める機会なく退職してしまい,その後弁護士に依頼しようにも証拠を集められない,という問題があります。


 また,弁護士に依頼すれば,多くの場合は退職・残業代請求・損害賠償請求を1パックにして依頼を受けることになり,その分費用を低減することができます(そして退職の意思表示も当然適法で有効です。)。

 しかし,退職代行業者を利用した場合には,退職代行業者に5万円,さらに弁護士に別途費用をかけなければ残業代等の請求を行うことができず,退職代行業者に支払う分だけ無駄な費用が生じます。


自分で退職の意思表示がしにくい方,弁護士に相談・依頼しましょう!

 以上のとおり,退職代行業者による退職の意思表示の代行は,退職の意思表示として無効となる可能性があり(雇用主が退職の意思表示として受け付けない可能性もあり),出勤しなければ懲戒処分を受けるおそれがあり,また,残業代請求権等の自らの権利行使の機会を逸する可能性があります。


 こんな問題だらけの代行行為に,5万円も支払うのは無駄であるというほかありません。


 弁護士から単純に退職の意思表示を内容証明郵便を使ってしてもらう場合でも,多くの場合は5万円程度の費用で足ります。そして,退職の意思表示としては完全に有効です。


 また,有給休暇を使えずに出勤する必要がある場合であっても,事前に弁護士に相談していれば会社でどのように対応すべきかも考えられますし,弁護士から通知が来た会社としては,そこから被用者に対して不当な行為をすることは難しくなりますので,出勤もしやすくなるのではないでしょうか。

 有給休暇を使える場合には,弁護士から有給休暇を取得する旨を含めて内容証明郵便にて退職の意思表示をしてもらったほうが,時季変更権を行使される可能性を下げられることも考えられます。


 もし,自分で退職の意思表示をしにくいな,と考えている方がいらっしゃるのであれば,退職代行業者ではなく,お近くの弁護士(弁護士会や法テラスでも)に相談に行っていただければと思います。


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